小説の中で唐突に現れる名言に飽き飽きする。これではいけない。名言というものは極力避けなければならない。ただの偽善の塊だから。甘い香りに誘われるミツバチではないんだから。騙されちゃあいけない。あぁ名言ほど愚かなものはない。人生の何たるかを言葉ごときで巧妙に言い表すことは叶わないだろう。それはただの偽善であって、詐欺師か何かの戯言に過ぎない。俺は信じないぞ。
最近読んだ小説、思い出せない。島崎藤村は「夜明け前」「春」「破戒」「家」「新生」「若菜集(全部読んでない)」を読んで終わり。「夜明け前」は幕末の雰囲気を庶民の視点から知れて良かった。「春」はロマン主義的な激情的なロマンスに触れることができてなぜだか救われる気がした。「家」は人物が多過ぎて何のこっちゃ分からなかったが、家族親戚もろもろ血の繋がりというものは争えないと思った。「若菜集」はロマンチックな文体が時折自分の胸を抉るような気がするが、長過ぎて全部読んでない。いつか読みたいが、心から漏れ出すほどにほとばしる愛情が僕にはもう残っていないような気がする。「新生」で自然主義の限界を見た。これではいけない。自分の罪を告白したいというのは気持ちが分からないではないけれど、自分の経験そのままを如実に描いていては、もちろん良い部分もあるし僕自身も写実的な自伝的作品を記してみたいと思った契機にはなったが、発展性や想像性に乏しい作品になってしまうなと思った。読んでいて苦しいというか現実に起きたことそのまま書いているのだから彼らの身の回りの人間はたまったものではないなというか、実際に島崎こま子という彼の姪に当たる人物は迷惑を被ったと思う(がしかし割と長生きしたらしい)。とはいえこの「新生」のような真正直な作品があったからこそ、「夜明け前」のような大作も大真面目に書くことができたのかと思うと失敗作とまではいえないかも知れない。人生全体の中で俯瞰したときに大きな転換点になったものと考えれば。
他には樋口一葉の「にごりえ」「たけくらべ」「大つごもり」。天才的な作品だと思った。古文調でいかんせん読みづらくて「大つごもり」はなんか途中で挫折した、天才にはついていけない、最初読めなさすぎで文章を逆さまにして読んでいるのかと思った。何かの暗号なのではないかと思った。しかしまぁ当時の貧困やら遊女の悲哀やら社会問題とも結びつけて論じられそうな絶妙な世界を描いていてこれは他の作品には全くみられない独自性が煌めいていて凄まじいと感じたが一方で全く真似できないというか自分に取り入れる要素が全くないので何も収穫がなかったな。天才というのは大谷翔平もだけれど凄まじい才能を目の前にすると何も共感する要素がないのでちっぽけな自分がさらにちっぽけに感じてただただ人生を悲観したくなるような気にさせられるね。どんな著作でも有名作品であれば何かしら吸収するものがあるような気がするのだけれど、彼女の作品は悲しいことにそういったものがとうに見出せなかったのが残念である。凡人には凡人の読むべきものがあるのだろうね。
そして志賀直哉「暗夜行路」「小僧の神様」とその他短編集。「暗夜行路」は良かった。特に中盤までは自我の心苦しさが如実に表現されていて、僕の冷たい心とハイタッチをしてくれているようだった。昭和に差し掛かっている(製作期間が長いので大正なのか昭和なのか分からないが)からなのか、島崎や漱石やらの作品よりも近代社会や自然科学への悲観的な思いが吐露されているように感じて、僕の表現するべきことの萌芽のようなものがここに芽生えているのではないかと思った。勘違いかも知れない。だがしかし主人公の自堕落な生活というのがよく芸者のところに行ってお酒を飲み歩くという内容で、場合によっては金を搾り取られてしまう人も多くいたようだけれど、今よりも実に人間的で羨ましい健全な生活だと思った。現代人の自堕落よりもよっぽど健全だな。僕の自堕落と比較してみてほしいね。いやしかしそこに僕らの時代の本質がぶら下がっているのではないか!後半の自然との対話のような内容は驚くほど克明に自然描写がなされていて圧倒させられたのだけれど、前半とのつながりが希薄なのでもう一歩読了感が満たされなかった。おそらくだいぶ長いこと放置されていた作品に無理やり付け加えたストーリーだからなのだろうね、まぁあとがきにも本人が書いていたけれど、少しもったいない。「小僧の神様」とその他短編集(全部読んでない)はまぁそれなりに良かったが、やっぱり長編小説の読了感のようなものがないので今ひとつ感動しなかった、もちろん面白い作品も多かったし短編ならではの良さもわかった気がしたけれど。芥川が好きな作家に一人志賀直哉を挙げていた理由が分かったような気がした。
次。森鴎外「渋江抽斎」を今読んでいるが頗るつまらない。文学史上最高傑作と言っていた人は何を見たのか。幕末の雰囲気と人々の濃密な交流が渋江抽斎を通してかろうじて見通すことはできるもの、詳細はよく分からない。遠くの海岸を薄目で眺めているというような作品で、眼前に大迫力で迫ってくるというものではないらしい。まだ半分なのでこれから大どんでん返しが来るかも知れないので乞うご期待。
その他アニメの有名どころをいくつかさらった。「エヴァンゲリオン」「進撃の巨人(全部見てない)」「涼宮ハルヒの憂鬱」「化物語(1話だけ)」「攻殻機動隊(2話だけ)」「宇宙戦艦ヤマト(1話だけ)」。自分のとって文学的に意義のある作品だけを集中してみるべきだと考えたので、必要がないと思ったらやむなく途中で見るのをやめた。もしかしたらその後から面白くなることもあるのだけれど、だいたい最初の方で描きたいことはわかってくる(と思う)。特筆すべきは「エヴァンゲリオン」と「涼宮ハルヒの憂鬱」。特に後者は良かった。これは度肝を抜かれた。今原作のライトノベルを読んでいるがこういうものを日本文学は表現するべきだと思った。もはや我々の核にあるのは純粋無垢な女子高生のみである。というのも僕の憂鬱な心を常に癒してくれるのもまた、tiktokをはじめとする純粋無垢な女子高生であるから。彼女らを抜きにして人生を語ることはできないし日本を語ることも、その未来を語ることも叶わない。僕らの未来は女子高生とともにある、そんな気持ちを新たにした。いつかまた「涼宮ハルヒの憂鬱」については論じてみたい。「エヴァンゲリオン」はまぁ「涼宮」ほどではないが良い作品だった、ただ詳しく論じる必要までは感じられない。