好きな音楽の詞を挙げてみよう。自分の琴線に触れるような歌詞。それは恋愛の歌でもいいし、社会性のある歌でも何でも、うっとりしてしまうようなフレーズ。どちらかっていうと社会性のある、社会風刺の歌詞がグッと刺さるものが多い。あるいは人間の不安な内面をそのまま表出するような詞。自分が社会批判を行いたいから、あるいは自分の暗い影の部分に焦点を当てたいから、というのもあるだろうと思う。それに加えて、ふと良い恋愛の詞を耳にするとそれもまたえも言われる心地になるので好きだ。いつくか挙げてみる。
ため息に消費税がかかる 愛が理由で人が死ぬ世界
何を信じて良いいのかも分からない 涙ありき 用意した正解
JUAT SAY NO 受け入れないよ 確かなことは一つだけ
生きることは諦めない SO もう俺らは諦めない
甲州街道吹き抜けた風レジを打ってレシートを渡す手
クリーニング屋 猫の寝言 生乾きシャツの襟の匂い
眠たい空気 凍る月
Don’t hand it over to anyone SO
もうオレらは我慢しない
(中略)
そろばん弾いて落とした爆弾
人を殺してい正当な理由?
正しい戦争 美しい戦争
JUST SAY NO ありえないっしょ
真っ当な怒りの正体
血液逆流のresistanceだから
もうオレらは我慢しない
GEZAN & Million Wish Collective「もう俺らは我慢できない」
社会性の塊のような曲でラップのように言葉を紡ぐ。直接的な社会批判だけでなく、卑近な具体例を散りばめることで身近な僕ら自身の問題として理解させてくる。今日の日本では爆弾が落とされているわけではないし革命的な社会変革を求めるというのは、少し左翼的すぎるというか偏りすぎてる印象を受けるけど、ロックというのはそもそも偏っているわけだし、社会から逸脱しているから価値があるわけで、それはそれで良いやんと思う。こういう詞を批判して一つ型にハマったような曲ばかり持ち上げているような人はセンスがない、というかロックのロックたる所以を理解していない。もちろんそれぞれに反対意見はあっていいし賛否両論なのはいうまでもないけど、一つの問題提起として、思ったことそのままに表現できるロックは素晴らしいものだと思う。恋愛や友情などありふれた曲ばかりで飽き飽きする世の中で、こういう曲が出てくるうちはまだまだ国や社会の力が残っていることを表しているだろうし、逆にこういうものがなくなってきたならそれは逆に社会の衰退を表すことになる、と思う。時代が時代なら革命を扇動してしまいそうなくらい有り余った力強いさ感じるし、間違って大それた犯罪でも犯してしまいそうな危うさがあるけど、まぁそういう危うさみたいなのも含めて魅力なんだろう。大衆ウケとは思わないけど、それ相応のファンは多いんじゃないかな、と思ってYouTubeの再生数見てみたら10万すらいってなかった。悲しいなぁ。
鮮やかなクラクション君が鳴らしてた
殺しかけた君が笑ってた
味気ないガムを噛みながら
気どっていた君が君が笑ってた汽車乗るネコ 黒い目の飢餓
暗い君歌う 汽車飛ぶ今取り澄ましながら鮮やかに笑っている
取り消されたaction君が笑ってた
少し赤く染まり咲いた桜草
曖昧に淡く咲く音のカケラ達(中略)
冷たい月凍えてた時夏のオトが君に囁いてた時
凛として時雨「鮮やかな殺人」
君がいない君がいない鮮やかな殺人行われていたんだ
冷たい月凍えてた時冬の花が君に囁いてた時
君がいない君がいない鮮やかな殺人行われていたんだ
物騒なタイトルが目をひく上に、曲も物騒で慣れてない人からすると辟易してしまうかもしれない。詞も抽象的で何のことを言っているのか判別がつかない。ただどこか不穏な空気感や無機質な日本人の空虚さみたいなものが窺える、気がする。今現に起こっている悲劇的な事象に対して傍観せざるをえないような諦念みたいなものというのかな。それは僕らの社会の根底に澱んでいるような何か暗い闇の部分。人々はそれに触れないように過ごすけれど、見えてきてしまうものには見える、幽霊に。ファンの考察によると、どうやら人身事故で亡くなった人のことを語っているんだということらしい。「鮮やかなクラクション」「汽車」「少し赤く染まり咲いた桜草」など、確かに誰かの不遇な死、そして電車にまつわることのような気はするが、明確なことはよく分からない。体言止めの表現が独特な雰囲気を醸し出すのに一役買っているように思う。特に「冷たい時凍えてた時夏の音が君に囁いてた時」の詞が僕に突き刺さる。意味はよく分からないのに、どうしてこんなに突き刺さるんだろう。何を言っているのか分からないのに、僕に何かを問いかけているような、問いかけていないような。高校の頃からずっと聴いているけど、いまだに意味はよく分からない。でも聴いてしまうし、何かのメッセージを受け取る、そんな曲。
時はいつでも
魔法の杖で
道の景色を変えるけど
波の音と
潮の香り
あの頃のままだよ
セブンティーン今でも 君が一番だ
卒業アルバムの右の端
やっぱり 君が一番だ
何度めくって
確かめただろう君の実家の酒屋は
コンビニに
なったんだね
店の中を覗いたら
レジに君が立ってた(中略)
結婚したって聞いたよ
好きだと言うのが
遅すぎた
子どももいるって
聞いたよ
話しかけずに
さらば青春(中略)
今でも 君が一番だ
AKB48「Seventeen」
思い出の中 輝いてる
やっぱり 君が一番だ
このまま ずっと
初恋の人
雰囲気変わってAKBの恋愛ソング。AKBはボーカルに覇気がなくて気に食わないのはあるんだけど、詞はやっぱりどれも良いんだよね。秋元康作詞でしかも当時は年に何曲も書いてたし内容も被ってきそうだけど、それでも良いものが多い気がする。こちらは僕が高校の時に聴いていたもの。「時はいつでも魔法の杖」が良いね。確かにそうだな、時が移ろって見る景色を変えていくというのは、春は桜が芽吹き、夏は青草生い茂ってみるみる景色を変えていったりっていうのはいくつになっても不思議だし何か神が魔法の杖を使ってるみたいだっていうのは面白い表現だ。それでも「波の音と潮の香り」は「あの頃のまま」というのも昔を思い出すおじさん世代にはグッとくるんじゃないのかなぁ。まぁ僕は男子校だったから特に自分のイメージと重なるということはないんだけど、鎌倉高校とか七里ヶ浜高校の人とかには良いじゃないかな(嫉妬あり)。後半は初恋の相手に久しぶりに会って昔を思い出し、今でも君が一番だよって内容で、甘酸っぱい初恋をうまく表現できてるような気がする。僕は初恋の人とか、どうかなぁ。そんなふうに考えたことはないけど、誰でも自分だけの初恋ってのはあると思うし、普遍的なものがあるのかなと思う。