2026/06/13 詩作

2026/06/13 詩作

「アゲハ蝶」

今日を振り返っても

電車に乗って

カフェに行って

飯を食って

仕事をして

家に帰っただけだった

仕事のことで頭がいっぱいで

道端に咲いていたであろう花のこと

鳴いていたであろう鳥のこと

優しく撫でていたであろうそよ風のこと

全く思い出せない

と思っていたけど

そういえばアゲハ蝶を5匹くらい見つけた

ひらひら可憐な羽根を羽ばたかせながら

手の届かないところを気ままに動き回っていた

2匹一緒に戯れているのもいたりして

もしかしたらモンシロチョウかもしれないと

目を細めてみたりした

ふいにアゲハ蝶を目にするのは

幸運の前触れだって

どこかで見た気がして

5匹も目にしたら一体どうなるんだろうって

でも黒いアゲハ蝶だと

不幸の前触れだとか

そんなことを考えていたのに

家に帰って一息ついた時

仕事がうまくいかなくて

そればっかり頭にごべりついていて

ふいに訪れた

幸運のひとかけらを

忘れかけていた


「やわらかさわやか」

固いコンクリートの歩道から

緑豊かな芝生の上に足を踏む入れると

その柔らかさと爽やかさが

瞬時に革靴から体の中に染み込んできた

曇天の梅雨空や遠くの鳥のごま粒に

目を凝らしていたその刹那

この公園のありのままの魅力が

思わぬ形で伝わった

やわらかさわやか

芝刈り機の音

そして草のムッとする臭い

でもやわらかさわやか

綺麗に整えられた芝生に

しゃがんで手を置きながら

その美しい毛並みを眺める

やわらかさわやか


「紫陽花」

近くの小高い丘に座って

紫陽花と芝生、そしてその奥の深い森を望む

欅やクスノキを見ると

公園に来たと感じるが

杉の木が高く立ち並んでいるのを見ると

森という言葉がしっくりくる

歩道を走るマラソンランナー

うねるコンクリートに

追い風向かい風

絨毯を滑る

赤い四輪の芝刈り機

青い作業着が中に浮かぶ

ふと紫陽花の近くにゴルフ帽を被った婦人

ベビーカーにチワワを乗せながら

長い望遠レンズをつけたカメラ

紫の紫陽花の前を行ったり来たり

チワワはまんまるの黒い眼をまばたかせ

赤い舌を揺らす

右から左から

上から下から

どうにも画角に満足しないらしい

ずっとカメラのディスプレイを見つめて

片手でチワワを撫でていた

僕はふいに芝生を手のひらでなぞってみる

坊主頭を撫でてるみたいで心地良い

若いカップルもスマホを片手に手を繋ぎながら

ピンクの紫陽花にカメラを差し向ける

くっくつほどに近づいて

首をかしげながら男に見せる

「どうかなぁこれ?」

「んまぁ、空が曇ってて惜しいなぁ、加工すれば?」

女は僕の方をチラリと見て

「そうねぇ、まぁいっか、ねぇ見てあれ」

こちらの方を指さしてくる

芝生をなぞっていた手がピクッと止まり

おもむろにスマホを出して取り繕う

淡い水色

写真におさめ

カメラロールは見なかった

「おう、どうした?」

「ほらあれ、あっちに変な建物ない?見えるあれ?行ってみよ」