夜更けを抱いた
ふところに
薄日のもれる
やるせなさ

「電車内」
隅の座席に腰かけて
画面をなぞって滑り込む
溜まった心の泥水を
吸い取り浄化するように
スマホの海に洗われる
ふいに隣が埋まり
女性の脚と長い髪
横目に入り込み
背中がざわつき
腰を起こしてスマホを閉じて
本を取り出し腕を組む
眉間に皺を寄せながら
澄んだ心に泥水が
逆流してきて文字が滑る
「ワールドカップ」
降りしきる雨音が
肌に染み渡らないように
布団を被って肌寒く
ワールドカップの賑わいが
肺に吸い込まれないように
タバコを吸って前が曇って
押し寄せる仕事の波に
呑み込まれないように
スマホの画面
いつか見た海辺の夕焼けに
包まれながら電車に運ばれる

「梅雨空」
シャッターを引き上げれば
雲の広がり満たされて
降りしきる雨音遅れて響き
一息吸い込めば
梅雨の湿気と雨の味
肌に染み込みふつふつと
五月晴れの澄んだ青
思い出しつつそれよりも
湿った空気が肌に馴染む

